大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)5855号 判決

〔抄 録〕

原判決挙示の証拠並びに当審証人菅原国明、同関口嘉一、同増田宣輪の各証言及び当審における各検証の結果を綜合すれば本件の真相は左のとおりである。

被告人石田、同斎藤はいずれも熱烈な日蓮の教旨の信奉者であつて、東京都港区麻布飯倉町二丁目七番地に本部を有する宗教法人霊友会の幹部であり、殊に被告人石田は常務理事として主要な位置にあつたが、偶々昭和二十五年四月四日粗末な服装をした氏名不詳の男に右霊友会本部に隣接する当時戦災を受け荒廃した儘になつていた人気ない八幡神社境内に呼び出され、右の男は被告人等に対し仲間が窃み出したのだがと言つて身延山久遠寺の寺宝で日蓮の親筆と伝えられ、日蓮の教旨を信奉する者にとりその信仰の対象として日蓮と同一視されていた「同日三幅本尊」三幅の買取り方を求め、ポケツトに忍ばせた七首を示しつつ、買取方に応じなければ第三国人に売却するか焼却すると放言した。被告人等は久遠寺において屡々「同日三幅本尊」を拝し之を熟知していたので、その真品なるを知り驚愕すると共に、如何にもして之を安全に守護して久遠寺に届けんと欲し右の男の風体、態度、人柄等より、今直ちに買取らなければ散逸乃至滅失の虞があり且つ警察署に連絡して手間どる等の事があれば右の男は逃亡し、又警察官が現われる等の事があれば破棄される虞があると思つたので、被告人等の手により之を譲り受けて久遠寺に返還せんとし、先方において三十万円を要求するを漸く納得せしめて売買価格五万円その男の手数料二千円と言うことにして五万二千円を支払い、右「同日三幅本尊」を買取つたところで霊友会においては、事の大小の別なく一切の事務は、会長小谷喜美の指示承認のもとに之を処理することになつていたが、当時同会の中に右会長の独断専行に対し批判の声があり被告人等においても右の事項を矯正することにつき意見を述べたところから、被告人等と小谷会長との間に気まずい関係が生じていたので、被告人等は特に右四日晩方大阪から帰京することになつていた小谷会長に報告の上久遠寺に連絡せんとしたが、四日夜大阪より会長は六日に帰るとの連絡があつたので会長の帰りを待つこととし、小谷会長は六日夜遅く霊友会本部に帰つたので、七日朝小谷会長に報告の上直ちに久遠寺に連絡し、且所轄警察署にも届出た。そして久遠寺より受取りに来た同寺総務増田宣輪等に右「同日三幅本尊」を引渡し、五万二千円を受取つたものである。

そもそも賍物故買等賍物に関する罪の本質は、他人の犯罪行為によつて奪われた財物の追求回復を困難ならしむる行為を罰せんとするにあるのである。されば叙上のような事情の下に賍物を買受けた被告人等の本件所為は右賍物故買の罪の本質に鑑み該犯罪に当らないものと言うべく従つて本件につき賍物故買罪の成立を認めた原判決には事実の誤認か或は法令適用の誤があり、且つ右誤が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、此の点において論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

註 本件公訴事実の要旨は、「被告人等は共謀の上、二五・四・四東京都港区麻布飯倉町二の七霊友会附近八幡神社境内において盗品たるの情を知り乍ら氏名不詳の男から身延山久遠寺々宝「同日三幅本尊」と呼ぶ掛軸三幅を金五万二千円にて買受け以て賍物の故買をなした」というのである。

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